andante 〜歩くような速さで〜

自作小説・二次創作小説ブログ

シチリアーナ 〜小瓶の中のアヴァロン〜(6)

2009-01-09-Fri-23:54
終ったぞと・・・・。
『シチリアーナ 〜小瓶の中のアヴァロン〜(6) 』、完結です。


気が付けば、(6)ですよ・・・・。
まあ、自分の首絞め膜って・・・・。(泣)

誤字脱字とか、翌朝に読み返すと凄いです・・・。(うおー・・・)


蛇足設定としては、(3)でリボンズが居なくなったので、アリーは助かってないと・・・・。
恐らく本編では、リボンズが拾ったんだろうと思う・・・。

で、ソランがどのくらいの大きさかと言うと、皆さんのお持ちの携帯電話を掌に立たせてください。それより少し大きいぐらいです。
(瓶が15センチぐらいだからね)




ああ、長々とお付き合い下さいまして、有り難う御座いました。

はう!もう9日?!
ああ、一週間は早いわ・・・・。















それから4年後。

2312年になった世界では、ソレスタルビーイングへの敗北宣言後、残された各国首脳人はCBの掲げる『戦争根絶』を理念とした新たなる世界を設立するために、国際連合を『地球連合』と改名し、地球上に存在するほぼ全ての国家の統合を目指す事となった。

もちろん、“完全なる戦争根絶”が成された訳では無い。
各地では未だ緊張状態が続き、争いの火種はくすぶり続けている。



しかし、そこにMSでの侵攻や侵略、または大規模な戦闘行為は行われてはいない。
精々人同士での小さな小競り合いか、小規模テロが起こる程度だ。

その理由は、4年前にCBにより世界中の軍事施設とそれに伴う施設も、軌道エレベーター内に至るまで、全て消失したからだ。
確かに自国を護ろうとするならば、軍備は必要で有る。
だが、それらは必要最小限に抑えられ、それ以上の物を持とうとするならば、CBの『謎の兵器』により、一瞬のうちに消失してしまうからだ。

世界中の何処であろうと、その兵器は威力を発揮し、まさに一瞬で人も物も消し去るのだ。


最初こそは反発を起こしていた各国首脳や各種ゲリラ組織なども、いざ自分たちがその標的として消されるとなると、その振り上げた拳を下ろさずにはいられなかった。
その謎の兵器により、CBは正に世界に君臨していたのである。

だが、彼らがその力で世界に圧倒的な支配をする訳ではなく、あくまでも世界の運営は『地球連合』で行われ、彼らがそれへ介入することは無かった。


世界は、概ね『戦争根絶』がなされたと言える状態となっていた。







シチリアーナ 〜小瓶の中のアヴァロン〜(6)








都心のオフィス街。
その一角の落ちついたカフェで、ライル・ディランディは待ち合わせをしていた。
気ぜわしいビジネスマンが多く利用するカフェでありながら、その店は店内に静かで落ち着きに有る雰囲気を醸し出していた。

窓際よりも少し奥まった席で、ライルは待ち人を待ちながら、店内のモニタースクリーンに流れるニュースを見ていた。
一流商社に勤め、今も沢山の商談を抱えている身としては、優雅に待ち人を待つ時間など無いのだが、相手が実兄の同僚と言う事もあり、午後の時間を無理やりに空けてきたのだ。


周りにいるビジネスマンと同様のビジネススーツを着ているライルの元へ、雰囲気の違う3人の人物が現れた。
「遅くなりまして、申し訳ありません。」
丁寧に謝ってきたのは、グラマラスなボディをカジュアルなスーツに包んだ長いウェーブの髪の女性だ。
その後ろに、肩口で髪を切りそろえた眼鏡をかけた中世的な人物と、箱を抱えた体格の良い右目だけを長い前髪で隠した青年がいた。


「あなたが、兄さんの同僚の方々ですか?」
立ち上がり挨拶を交わしながら、ライルは女性の方にそう尋ねた。
「ええ。スメラギと申します。」
後ろの2人も紹介され、4人が席に座ると、ウェイターが注文を取りに来た。
4人ともコーヒーを頼んで、会話は始まった。






「兄さんの、ニール・ディランディの同僚と言われましたが、兄はどのような仕事をしていたのですか?」
その質問意に、ティエリアとアレルヤと名乗った人物はどこか微妙な顔をしたものの、スメラギという女性は警備会社の一種ですわと答えた。
「警備・・・会社ですか。」
ライルは納得したようなどうかという表情はしたものの、それ以上の追求はしなかった。
「で、俺にご用件とは?」
スメラギは一瞬表情を固くしたものの、しっかりとした口調で内容を告げた。


「実は、私どもはあなたのお兄様、ニール・ディランディ氏の『遺品』をお持ちいたしましたの。」
「え?」
「お兄様、ニール氏は、我が社での仕事中の不慮の事故で亡くなりまして・・・・。」
「嘘だ。」
ライルはスメラギの言葉を、きっぱりと否定した。

「兄さんは生きている。」
「その気持ちは分るが、これは事実だ。」
ライルの言葉に、ティエリアが反論する。
だが、ライルは頑としてそれを受け入れない。
「そう思いたいお気持ちは分りますが・・・・でも、 「そういう意味では無いのですよ。」
ライルはスメラギの言葉を遮る。


「なんと言うか・・・・・。そう、一卵性双生児の感というものかな?」
ずいぶんと非科学的な言葉に、スメラギ達は唖然とする。
「でも、そういうものって、以外に当るものなんですよ?あなた方は兄さんの“死体”でも見たんですか?」
ライルの問に、スメラギ達は皆首を横に振る。
「行方不明、てことでしょ?じゃあ、やはり兄さんは生きていますよ。」
ライルは自信を持って胸をはり言う。




それでもと言い募るティエリアを制し、スメラギは一応これをお渡ししておきますと、アレルヤに持っていた箱を渡すように言う。
ライルはその一抱え程の大きさの箱を受け取り、自分の横に人がいない事を確認して、他所のテーブルからイスを一つ借りるとそこへ置いた。
中を開けて見れば、いくつかの文庫本などと簡単な私物が入っていた。
その中に、ライルは有るものを見つけた。


「ああ!これは兄さんがもってたのか!」
ライルは箱からそれを取り出すと、嬉しそうにそれを眺めた。
それは15センチ程の大きさの薬瓶のようなもので、コルク蓋がしてあり、蓋の内側には何故か鉄の十字架が付いているものだ。
「何処を探しても無かったんだが・・・・。そうか・・・兄さんが持っていっていたんだ・・・・。」
感慨深げにそれを見るライルに、思い出の品ですか?とアレルヤが尋ねる。
「ええ。とても・・・俺たち兄弟にとっては、何物にも変えがたいものです。・・・大事な思い出です・・・・。」
ライルはそう言うと、愛おしそうに瓶を撫でた。
「忘れたような感じだったけど、結局覚えていたんだ・・・。」

あの日、テロ現場で保護された兄は、ソランの事を全て忘れていた。
どれだけライルが尋ねても、あの瓶を見せても、兄はソランの事を思い出すことは無かった。
でも、兄はやはり覚えていたのだと、ライルは嬉しくなった。

ライルは暫くそれを見ていたが、他には何がと箱の中を見てみる。







不意に、カフェの中がざわめいた。
何事かと店内を見れば、皆がモニタースクリーンに映し出されるニュースを見ていた。
臨時ニュースでは、CBの謎の兵器によるゲリラ基地の消失が放送されていた。
周りのビジネスマン達が口々に色々な憶測を言う中、スメラギ達は小さく視線を交わしあった。


この謎の兵器と呼ばれものは、彼女達ですらあずかり知らぬ所で、秘密軍事基地やゲリラ組織基地などを消失させていたのだ。
誰がどんな意図で行っているのか?スメラギ達もこの4年間、それを探っていたが一向にその主を特定することは出来ていない。

周りの人々がCBを非難する中、ライルは「でも、俺はガンダムは好きだな。」と呟いた。
「え?」
驚き見る三人に、変ですか?とライルは尋ねる。
「だって、CBが軍事基地や軍備をなくしてくれたお蔭で、助かった人々が居るのは事実ですし。確かに一部やりすぎな所は有ったですが、それでも世界が『戦争根絶』に一つになり、そして地球連邦というものを作れたのも、CBのお蔭ですから。」
ここだけの話ですけど、俺の大学の先輩で、反連邦勢力組織に入ってた人が、今では人道支援組織に移ったのも、CBのお蔭ですよ。とライルは笑って言った。


「その先輩、クラウス先輩からの紹介で、俺こんどアザディスタンへ商談へ行くんですよ。中東でも、太陽光発電の受け入れが進み、人々の暮らしも良くなってるんです。」
だから、俺はガンダムが好きなんですよ。とライルは言う。

その言葉に、スメラギ達は何処か嬉しそうに、そうですかと答えた。


(まあ、本当はそれだけじゃないんだけど。)
ライルはそう胸の中で呟く。
自分がガンダムを好きな理由は、あの青い粒子だ。
あの青い粒子を纏い飛ぶガンダムの姿は、あの日自分を助けてくれたソランの青い光の粒子と同じような色をしているからだ。

青くキラキラと光りながら、それでいて深いコバルトブルーの色を持つ光。
ライルの記憶の中に、鮮明に焼きついている美しい光だ。
(特に、あの機体は好きだな。)
モニターに映し出されているCBのガンダム、その中の接近戦に特化したトリコロール色の機体。
それは何故かライルの心を引き付けた。








意識がモニターに行っていたせいか、手元で漁っていた箱が床に落ちる。
「うわ?!しまったッ!!」
驚き慌てて零れ落ちた中身を拾っている時、文庫本の中から何かひらりと落ちてきた。
何かと拾ってみれば、兄の写真だ。
「・・・・これはッ!!」
その写真をよくよく見て、ライルは驚いた。

何かと覗き込んだスメラギが、その写真を見て驚く。
「なんです?」
そう問うティエリアに、スメラギは小声でロックオンと刹那のツーショット写真よ!と言う。
「そんなものが?!」
驚く三人など目に入らぬくらいに、ライルはその写真を凝視していた。



どこか南国の国だろうか?
兄と、その兄が嬉しそうな笑顔で肩を抱く少年との、2人だけの写真。
その少年は、兄よりもかなり若く、戸惑うような恥らうような顔をして写っていた。
中東系の小麦色の肌、跳ね癖の有る短い黒髪、大きなクリムゾン色の瞳。
自分の目では一度も見たことが無かったが、かつて兄に聞いたソランの容貌そっくりの少年。

兄と、このソランと同じ容貌をもつ少年と、あの瓶と、四年前から始まったCBの謎の兵器の消失事件と、兄が死んだと言う同僚達。

それらが一つの答えを、ライルの中にもたらした。




「そうか。・・・そうだったんだ。・・・・そういう事だったんだ兄さん!あはははははははははッ!!」
急に笑い出したライルに、スメラギ達をはじめ、店内の視線が集まる。
「そうか!そういう事だったんだッ!!」
ライルは1人納得すると、どうして今まで気付かなかったんだ!とまた笑う。

「あ、あの、どうされたんですか?」
恐る恐る尋ねてくるスメラギに、ライルは可笑しそうに笑いながら、やはり兄さんは死んではいませんよ。と言う。
「だ、だから、どうしてそんな事になる?!」
ティエリアの詰問に、ライルはこれが答えですよ!と写真と瓶を見せる。


「“ソラン”は生きていて、兄さんの側に居たんだ!そして、兄さんの願いを叶えた!」
「“ソラン”?」
「ええ、この少年ですよ。この少年は、ソランですよ。・・・・あの時、死んだと思っていたけど、生きていたんだ・・・・。」
ライルは愛おしそうに、写真の少年を見る。

「いえ、彼は“刹那”と言って、別人では?」
アレルヤはそう言うが、ライルは彼はソランだと言い張る。
「そうじゃなきゃ、この瓶とあの謎の兵器と呼ばれる消失事件の説明がつかない。」
「なッ?!あなたは、あの謎の兵器が何か分るのか?!」
思わず詰め寄るティエリアに、ライルは多分と答える。


「多分、ソランの“魔力”じゃないかな?ソランは“妖精”だし。」
魔力やら妖精やらの発言に、ティエリアはぽかんと間抜けに驚く。
その顔を見て、あ!信じてないでしょ!とライルは言う。
「本当ですよ!ソランは兄さんが露店で買って来た“妖精”だったんですよ。この瓶に入っててね。で、兄さんと『ずっと一緒に居る約束』をしたんですよ。・・・・でも、あのテロの時に、俺を助けてソランは死んだ。いや、死んだと俺も兄さんも思っていた。・・・・だから、兄さんはソランの事を忘れてた。」

でも、ソランは生きていた。
人間の体を手に入れて!


「そして、兄さんの側に居たんだ。あの消失は、ソランじゃないと出来ない。ソランの行動理念は、兄さんの側に居る事と、兄さんの願いを叶える事。・・・・兄さんがどんな事をソランに願ったかは分らないけど、それをソランは実行した。いや、今も実行している。」
そこでライルの視線が、写真からモニターのニュースへと移る。
ニュースでは大きな穴をさらすだけとなったゲリラ基地を映していた。

「あんなの、人がどれだけ考えても、出来るような兵器じゃないですよ。」
作るとすれば、ガンダムを作るよりも高度な技術と知識と時間が必要だ。
寧ろ妖精の魔力と言うほうが、納得出来るかもしれない。



この時、スメラギ達は本気にはしなかったが、実はこのライルの考えは、殆ど事実だったのだ。





「この少年も、兄さんと同じ時に居なくなったんじゃないかな?」
ライルの問に、アレルヤが驚き「何故それを知ってるんです?!と逆に問う。
それに対してライルは、ああ、やっぱりそうか!と納得する。
「やっぱり2人して、一緒に行っちゃったんだ。」
「「「何処へ?!」」」


『アヴァロン』


スメラギ達にライルは簡潔に答えた。
「アヴァロンて、何処ですか?」
「アヴァロンは、『妖精の世界』とか、『冥界』とか言われるけど、一番有名なのは、アーサー王の眠る島、、『勇者のみが迎えられる永遠の休息の地』 。・・・・兄さんは、警備会社じゃなくて、本当はCBに居たんでしょ?それも、ガンダムに乗ってた。」
ライルの言葉にスメラギ達は答えなかったが、その表情がそうだと答えていた。


「ニュースで4年前から二機のガンダムを見なくなった。トリコロール色の接近戦型と、・・・・緑色の射撃型。あれが兄さんとソランの機体じゃなかったのかな?で、多分、兄さんは大怪我をした。だから、ソランは兄さんをこれ以上戦わせないために、アヴァロンへ連れて行ったんだ。して、自分は今も兄さんが望んだ『戦争根絶』を実現しようとしている。」
ほんと、焼けるくらいに健気だね。とライルはひとりごちる。

「兄さんは死んでなんか居ない。ソランが兄さんを死なせる訳が無い!それは、断言できる!」
ライルがそうきっぱり言うと、スメラギ達はもう何も反論出来なかった。







スメラギ達と別れ、ライルは近くに止めていた自分の車へ、箱を抱えて戻って来た。
箱を助手席に置くと、2人の写真を取り出す。
仲睦まじく写る二人。
「良かったね、兄さん、ソラン。」
ずっと一緒だね。
置いていかれるのは寂しいけどね。とライルはそう苦笑すると、兄から送りつけられた車、ランチア・ラリー037を発進させた。








それから数日後。ライル・ディランディの姿は、アザディスタンの空港に有った。
王室関係者に出迎えられ、皇女マリナ・イスマイールと対談し、いくつかの商談を取りまとめると、ホテルへと戻った。
ホテルの窓から市外を見れば、貧しいながらも大地にしっかりと足をつけ生きている人々が居る。
スーツからラフな私腹に着替えて、市街地を抜けていくと、簡素な町並みに出た。

そこで、待ち人は彼を待っていた。
「よう!来たか、ライル!」
「クラウス先輩!」
久しぶりだと挨拶を交わしていると、後ろに人影が現れた。
淡い紫色の肩までの髪とストロベリー色の瞳をした女性だ。

「紹介しとこう。俺と同じ人道支援組織カタロンで働いてる、アニュー・リターナー君だ。」
色んな分野で博士号を取るほどの素晴らしい頭脳の上に、美人だろ!と何故か大いに自慢するクラウスに、ライルは苦笑しながらもアニューと挨拶を交わした。
アニューの運転する車で、クラウスが活動する地域へと向かう。
「旧クルジス地区になるんだが。・・・・その、ライル、君は良いのか?」
ライルの家族がKPSAのテロで死んだ事を知っているだけに、クラウスは今度の訪問は少し戸惑いが有ったのだ。


「クルジス人全てが悪い訳じゃないですよ。悪いのは、KPSAの幹部ですから。」
子供を自爆テロや、少年兵として使う非道な奴ら。
憎むべきはそいつらで有って、その時戦っていた子供達では無い。






程なくすると、地平線の向うに小さなキャンプ地が見えてきた。
「あそこだ!」
クラウスがそう叫ぶ。
車はキャンプ地の一角で止まった。

先の第五次太陽光紛争時の戦いで崩れたままの町並みに、細々と人々が肩を寄せ合い生きている。
クラウスとアニューはまだ仕事があると言うので、ライルは1人で町並みを見て行く事にした。
「あんまり遠くへ行くなよ。迷子になるぞ!」
クラウスの言葉に、子供じゃないですよ!と返し、歩き出す。




少し歩いていくと、廃墟の町を見下ろす丘の上に出た。
夕日が落ち始めていて、空と大地を赤く染め上げる。
その中に、大地に立てられている銃の列があった。
その中で、一人の青年が黙々と穴を掘っている。
ライルの気配に気が付いたか、青年が手を止め振り向いた。

その彼を見て、ライルはぎくりと驚いた。
彼が余りにも“ソラン”に似ていたから。



「・・・これは、墓標かい?」
ライルの問に、青年はそうだと答えた。
「死体は無い。代わりに遺品を埋めているだけだ。」
その青年の言葉に、ライルは「じゃあ、こいつも埋めてやってくれ」と小さな小瓶を差し出した。
あのソランが入っていた瓶だ。
「・・・それは?」
「ん?ああ、俺の知り合いの子でな、クルジス出身の子がいたんだ。でも、ちょっと遠くへ行っちまってな。・・・誰にも会うことが出来ない、遠くへな。」

それで何かを悟ったのだろう、青年はライルから瓶を受け取ると、それを今しがた掘っていた穴に埋めた。
そこへ最後に銃を刺す。




「なあ、君に双子の兄弟は居なかったか?」
ライルの問に、青年は分らないと言う。
「俺には子供の頃の記憶が無い。ふらふらと彷徨っているのを、ここのキャンプの人間に拾われた。」
それからキャンプで仕事をしながら生活していると彼は言う。
「名前は?」
「本当の名前は知らない。ただ今は、カマル・マジリフと呼ばれている。」
「そうか。俺の名は、ライル・ディランディだ。」
自己紹介をして、ライルはカマルにこう持ちかけた。

「なあ、これが終ったら、俺にこの国のことを教えてくれないか?」
「俺には記憶無いと言った。」
「いや、今、君が見て知っている事で良いんだ。この国がどんな風に変ったか、この世界がどんな風に変ったか、それが知りたいんだ。・・・・それを、この変った世界を見ずに『向こう側』へ行っちまった2人に、会うことが出来たら、教えてやりたいんだ。」
あんた達がやった事は、無駄ではなかったと。



「・・・俺で良ければ。」
「おお!ありがとな!」
ライルはそう感謝すると、カマルに手を差し出した。
カマルは一瞬躊躇ったが、その手を取った。

「・・・では、何から話すんだ?」
「んー、そうだなあ。まずは、――――――――。」
ライルはそう言うと、落ち行く夕日の方に、西の遥か先にある“林檎の島”に思いを馳せながら、質問をした。




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